ある時ある所で二つの怪談が誕生した。
ひとつは「話を聞いたら現れる霊」の怪談。もうひとつは「足を奪いに来る霊」の怪談。
この二つは融合して「きもちの悪いもの」という怪談になった。
そしていつしか「きもちの悪いもの」の出身地には鹿島信仰により「かしま」が与えられた。
これが心霊都市伝説カシマレイコの原型である。
「きもちの悪いもの」に「かしま」という名前が与えられたのは1972年・北海道札幌市においてである。
当時札幌には片腕片足のない気持ちの悪い障害者がやって来たという噂が流れていた。
この障害者が実在したかどうかは不明だが、この障害者は「カシマさま」と呼ばれていた。
神話学によると四肢の欠損した姿は神の化身と見なされる。
よってこの障害者には軍神・武甕槌(タケミカヅチ)=鹿島様の名が意識的または無意識的に与えられたのだと思われる。
そして片足で気持ちの悪い容姿とカシマというキーワードが「きもちの悪いもの」の怪談と結び付き、そこにスフィンクス(質問に正しく答えられないと殺される)および幸福の手紙(不幸の手紙の原型)の要素が付け加わって心霊都市伝説カシマレイコの初期形態が整った。
「同じ事を3日以内に5人に伝える」という要素により、この心霊都市伝説は爆発的に広まった。
発祥地だけでは収まりきらず、北海道を抜け出て新潟県糸魚川をパニックに陥れた。
続いて東京都に連鎖し、この時、踏切事故伝説と融合して標準型が日の目を見た。
そして噂は関東圏から関西圏に突入し、国内史上最悪の大火災が起きた千日デパートが元となって火傷型が盛隆。
噂の勢いはその後も衰えないまま広島へと伝わり、今度は被爆の記憶と相まって原爆型が挽回。
戦争系列に関しては、当時恩給の支給されない韓国籍の傷痍軍人(戦争で手足を失った軍人)が各地で物乞いをしていたため、これが兵士型、空襲型、手または目のないバージョンの契機になったと推定される。
最終的に噂は沖縄県にまで到達して全国制覇したが、
この過程において他の都市伝説と融合したバリエーションが続々と生み出される事になった。
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