私の名は「友達の友達」。失踪した先代・松山ひろしの意志を引き継ぐ三代目カシマレイコである。
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初代・青山葵はカシマレイコ研究の礎となる論文をいくつか書き残した。
その代表作「かしまさん研究序論」をなぞらえ、私は「かしまさん研究本論」を展開する。
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日本を代表する都市伝説研究家だった二代目は、2004年までのカシマレイコに関するあらゆる記録をまとめ上げ、サイト『現代奇談 - カシマ包囲網』および書籍『呪いの都市伝説カシマさんを追う』という形でカシマレイコ研究の集大成を世に問いた。
『かしまさん研究本論』はこの二代目の研究を骨格とし、
空白の10年間と、これから登場するであろう新たな情報を肉付けしていく。
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カシマレイコはフィクションである。カシマレイコの話を聞いても本当に現れはしない。
だが、カシマレイコの研究に携わった両名は失踪した。
一人目は『Urban legends / 噂と都市伝説』の管理人・おろち。
彼は初代・青山葵の要請を受け、自分のサイトでカシマレイコに関するアンケートを実施した。
おろち氏が失踪してサイトが閉鎖されたのはそれから間もなくのことだった。
二人目は『現代奇談』の管理人・松山ひろし。彼もおろち氏と同じ運命をたどった。
『呪いの都市伝説カシマさん』を出版した翌年に失踪し、『現代奇談』と共にネット上から姿を消した。
もしかしたらカシマレイコの話を全国規模でする事がタブーなのかもしれない。
仮に権力者の悪口を酒場で言い合ってもどうということはない。
そんなつまらない事に権力者は腹を立てたりしない。
だが開けっぴろげに路上演説をしたりデモ行進をしたりしたとなると話は違ってくる。
そんな大それた事を仕出かした者は権力者に目を付けられ、最悪命を落とすことになるだろう。
怪談もまた然り。仲間内でこっそり話しているうちはいい。カシマレイコの目に留まる事はない。
だがメディアを通じて不特定多数の人間に広めると、もはや見過ごしてはもらえなくなる。
私もまた先達よろしく失踪するかもしれない。その時は誰かが私の後を継いで四代目になればいい。
ちょうど私が失踪した二代目の後を継いで三代目になったように...
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